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彗星のふるさとはどこか:太陽系の外縁に残る氷の天体たち

彗星のふるさとはどこか:太陽系の外縁に残る氷の天体たち

夜空に長い尾を引く彗星は、突然どこからか現れるように見えます。けれども多くの彗星は、太陽系の外側にある二つの“保管庫”からやって来ます。

短い周期で戻ってくる彗星は、主に海王星の外側に広がるカイパーベルトや散乱円盤から。数百年から数百万年単位で戻る彗星は、さらに遠いオールトの雲から来ると考えられています。

ただし、両者の確かさは同じではありません。カイパーベルトには実際に観測された小天体が多数あります。一方、オールトの雲はまだ直接観測されておらず、長周期彗星の軌道から存在が強く推定されている領域です。

  • 彗星は、約46億年前の太陽系形成時に残った氷と塵を多く含む小天体
  • 太陽に近づくと氷が気体になり、コマや尾が見える
  • 彗星の主な供給源は、カイパーベルトとオールトの雲
  • オールトの雲は有力な仮説だが、個々の天体を直接見たわけではない
目次

彗星は「太陽系の外側に眠っていた氷の残りもの」

彗星の正体は、巨大な星ではありません。多くは数kmから数十kmほどの核を持つ、氷・塵・有機物を含む小さな天体です。

NASAは彗星を、太陽系ができたころの残りものとして説明しています。つまり彗星は、地球や木星のような惑星になりきれなかった材料の一部です。

太陽から遠い場所では、彗星は暗く冷たい氷の塊に近い姿で回っています。ところが太陽に近づくと、表面の氷が温められて気体になり、塵を巻き上げます。このガスと塵の広がりが「コマ」、太陽風や光の圧力で流されてできるのが「尾」です。

ここがポイント: 彗星は、最初から尾を引いている天体ではありません。太陽に近づいて温められたとき、初めて彗星らしい姿になります。

ふるさとは二つある:カイパーベルトとオールトの雲

彗星の行き先や戻ってくる間隔を見ると、すべてを一つの場所から来たとは考えにくいことが分かります。

天文学では、彗星の供給源として主に二つの領域を考えます。

領域場所のイメージ主に関係する彗星確かさ
カイパーベルト・散乱円盤海王星の外側に広がる円盤状の領域短周期彗星、特に木星族彗星多数の天体が観測されている
オールトの雲太陽系を球殻のように取り囲むと考えられる非常に遠い領域長周期彗星彗星の軌道から推定されるが、直接観測はまだない

カイパーベルトは、海王星の外側の氷の帯

カイパーベルトは、海王星の軌道の外側にある氷天体の多い領域です。冥王星もこの領域に属する代表的な天体です。

ここにある天体は、太陽系の惑星ができた後に残った材料と考えられています。太陽から遠いため、水やメタン、アンモニアなどの氷を保ちやすく、彗星の材料として自然です。

ただ、カイパーベルトの天体がそのまま内側へ落ちてくるわけではありません。海王星などの重力で軌道が少しずつ変えられ、さらに木星の重力に捕まるようにして、太陽の近くを何度も回る短周期彗星になります。

短周期彗星とは、ESAの説明では公転周期が200年以下の彗星です。人間の一生のうちに再び戻ってくる可能性がある彗星は、この仲間に入ります。

オールトの雲は、太陽系を包む遠い氷天体の貯蔵庫

一方、長周期彗星は様子が違います。軌道が非常に細長く、太陽系のあらゆる方向からやって来るように見えます。

惑星が並ぶ平面に沿って来るだけなら、カイパーベルトのような円盤状の領域で説明しやすいでしょう。しかし長周期彗星には、上からも下からも飛び込んでくるような軌道があります。

この特徴を説明するために考えられているのが、オールトの雲です。NASAは、オールトの雲を太陽系を球殻状に取り囲む遠方の領域として紹介し、長周期彗星の起源を説明する考え方としています。

オールトの雲はとても遠く、NASAによればボイジャー1号が現在の速度で進んでも到達まで約300年かかるとされます。さらに、そこにある個々の小天体は暗く小さいため、望遠鏡で直接見つけるのは非常に難しいのです。

なぜ外側の氷天体が内側へ来るのか

彗星は、外側で静かに眠っていた天体が、重力によって軌道を変えられて太陽の近くへ来たものです。

惑星の重力が軌道を乱す

太陽系の外側には、木星・土星・天王星・海王星という巨大惑星があります。これらの惑星の重力は、小さな氷天体の軌道を長い時間をかけて変えます。

とくに海王星の外側にある天体は、海王星との重力のやり取りで軌道が乱れ、より内側へ入り込むことがあります。その後、木星の強い重力の影響を受けると、周期の短い彗星として太陽の近くを繰り返し通るようになります。

遠い天体ほど、小さなきっかけで大きく動く

オールトの雲にある天体は、太陽から非常に遠い場所にあると考えられています。そこでは太陽の重力の支配が弱くなり、近くを通る恒星や銀河全体の重力の影響を受けやすくなります。

その小さな押しが、長い時間をかけて天体の軌道を変えます。結果として、一部の氷天体が太陽系の内側へ落ち込むような軌道に入り、長周期彗星として見つかるのです。

彗星の尾は「進行方向の後ろ」とは限らない

彗星というと、進む方向の後ろに尾が伸びるイメージがあります。けれども、これは少し不正確です。

彗星の尾は、主に太陽からの光や太陽風によって押し流されます。そのため、尾は基本的に太陽と反対方向へ伸びます。

彗星には大きく分けて二つの尾があります。

  • 塵の尾: 彗星から出た細かな塵が広がったもの。やや曲がって見えることがある
  • イオンの尾: 電気を帯びたガスが太陽風に流されたもの。比較的まっすぐ伸びやすい

つまり、彗星が太陽から遠ざかるときには、尾が進行方向の前方に見えることもあります。尾は「走った跡」ではなく、太陽との関係で向きが決まる現象です。

観測で分かっていること

彗星は遠くから眺めるだけの天体ではなく、探査機が近づいて調べた例もあります。

ESAのロゼッタ探査機は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(67P)を長期間観測しました。ロゼッタの観測では、彗星の表面や周囲のガス、塵、氷のふるまいが詳しく調べられました。

ここから分かるのは、彗星が単なる「きれいな氷の球」ではないことです。67Pは暗い有機物に富む表面を持ち、内部は氷と塵がゆるく集まった、空隙の多い構造だと考えられています。

現時点で比較的よく分かっていることは、次の通りです。

  • 彗星は太陽系形成時の物質を多く残している
  • 太陽に近づくと、氷が昇華してガスと塵を放出する
  • 短周期彗星はカイパーベルトや散乱円盤と深く関係する
  • 長周期彗星はオールトの雲から来ると考えられている
  • 彗星の表面や活動は、探査機観測で想像以上に複雑だと分かってきた

まだ分かっていないこと

彗星の起源はかなり整理されていますが、未解明の部分も残っています。

いちばん大きいのは、オールトの雲を直接見ていないことです。長周期彗星の軌道を説明するには非常に有力な考えですが、そこにある無数の小天体を一つひとつ観測して確認できているわけではありません。

また、彗星が地球の水や有機物の供給にどれほど関わったのかも、単純には決められません。彗星には水や有機物が含まれますが、地球の海の水と彗星の水の性質がどれほど一致するかは、彗星ごとに違いがあります。

残る大きな問いは、次のように整理できます。

  • オールトの雲には実際にどれほどの数の天体があるのか
  • それらは太陽系形成時にどの場所で生まれ、どう外側へ散らばったのか
  • 彗星は地球の水や生命材料の供給にどれだけ貢献したのか
  • カイパーベルト天体、散乱円盤天体、彗星の境界をどこまで明確に分けられるのか

彗星を見ることは、太陽系の外縁を見ることでもある

彗星は、夜空に一時的に現れる訪問者です。しかしその背景には、海王星の外側に広がるカイパーベルトと、さらに遠くで太陽系を包むと考えられるオールトの雲があります。

短周期彗星は、太陽系外縁の円盤状の領域から内側へ送られてきた氷天体です。長周期彗星は、まだ直接見えない遠い貯蔵庫の存在を教えてくれる手がかりです。

次に彗星のニュースを見るときは、明るさや尾の長さだけでなく、次の点にも注目できます。

  • 公転周期は200年以下か、それより長いか
  • 軌道は惑星の並ぶ平面に近いか、大きく傾いているか
  • 太陽に近づいたとき、どんなガスや塵を出しているか
  • 探査機や望遠鏡が、その彗星の成分をどこまで調べているか

彗星の尾は、太陽の近くで一時的に現れる現象です。けれどもその核には、太陽系が若かったころの氷と塵が閉じ込められています。彗星がどこから来たのかをたどることは、太陽系の端に何が残っているのかを探ることでもあります。

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